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スウェーデン、アメリカ文化比較考 ─── あるバンパイア映画を通じて
- 2012/06/01(Fri) -
(久しぶりの更新ですみません。きょうは、先日もちょっと書きかけましたが、あるスウェーデン映画とそのリメイク・ハリウッド版の比較を通して、スウェーデン人的なものは何かを書きます。「アメリカ的なもの」 は、私たち日本人は、テレビを通じて、「アメリカ人イコール外国人」 とみなしている習慣が国民的合意で出来上がっていますから、特に説明はいりませんね。)


とりあげる映画は、スウェーデン語の原題は、
Låt den rätta komma in
英語に直訳すると
Let the right one come in
l

です。この one は一般的な意味の 「人」 を表しますから、「正しきものを中に入れよ」 という意味ですね。let は使役動詞で、後ろに来る目的語がそのあとの原形の意味上の主語です。これは受験常識でした。

で、そのアメリカ版は
Let me in
c

という題名です。正確には、アメリカ版は、リメイクではない、と監督も言っているようで、各所にスウェーデン版とは違う場面が入っています。そこが、いわば、映画効果以外に、アメリカ人監督も違和感をもったスウェーデン人的なところなのですが。



     ①題名: 一人称を題名に入れる段階で、スウェーデン人ならためらいます。いまや、日本ばかりか
        アジアも席巻している "me generation" の中心のアメリカならではの物言いです。

     ②衣服: スウェーデン版の少年は屋内では裸で寝ています。これは、零下20度でも屋内ではTシャツ
        短パンでいられるスウェーデンの住宅事情では当然です。しかし、アメリカの住宅はそうではあり
        ません。

     ③子どもの好奇心: アメリカ版の少年は隣家の恋人夫婦の性行為を望遠鏡で覗き見ることを常習化し
        ていますが、スウェーデン人の子どもならそんなことに目の色かえません。この点では、日本人
        はもう立派にアメリカ人的ですね。スウェーデン人の主人公は何に好奇心をもっているかという
        と、近隣で起きている猟奇的殺人記事のスクラップ集めです。情報収集の価値を教えるスウェー
        デン人ならではの振る舞いです。

     ④親: どちらの映画も、少年の親は離婚寸前あるいは別居、という状態です。しかし、スウェーデン
        版では、少年が父親のところに遊びに行く場面がありますが、アメリカ版では、父親と母親が電
        話で話すこともうまくできません。スウェーデン人の別居とその間の自由で一見のんびりした空
        気は事実で、これは、アメリカや日本では見られないものです。ちなみに、スウェーデン版の父
        親がアルコールに惑溺している観に描いているのも、アルコールに厳しいスウェーデン人的な倫
        理の反映です。アメリカであれば、あれは、アルコールでなく、性的醜聞とかになるはずです。

     ⑤ベッドイン: 少年のベッドに少女が裸体で入ってくる場面がありますが、これも、スウェーデン語
        原作以来なのでアメリカ版も変えるわけにいきません。スウェーデン人の男女なら、裸で一緒に
        ベッドインして静かに一晩中話す、ということは普通です。私もそうしたことあります。でも、
        日本人やアメリカ人ならば、若い男女がそんなふうにしんみり話すなんでありえねぇ、駄作だ、
        と憤慨する場面になるのでしょう。これは、完全にアメリカがスウェーデンを越えられない場面
        です。

     ⑥住宅・店舗: スウェーデン版のものは、住まいも店舗もスウェーデンに一般にあるもので、私には
        懐かしい光景です。アメリカのものは、きっとアメリカの風景なのでしょう。雪の日に裸足なの
        は、スウェーデンの冬の道路を知っている者にしかその感覚はわかりません。

     ⑦トレーニング: 少年がいじめに対抗するために筋力トレーニングをする場面がありますが、あれも
        スウェーデン人流です。スウェーデン人は、老人も少年少女もマシントレーニングを普通にしま
        す。それが、科学的知識尊重する彼らの行きついた健康管理観なのです。日本では、年少者によ
        るウエイトトレーニングは禁止とか。アメリカでは、逆に、あそこでバーベルが出るのは滑稽か
        もしれません。しかし、スウェーデンでは、あれは最も妥当な行動なのです。

     ⑧いじめ方: アメリカ人の脇役不良は、主人公の少年を "girl" と呼んでいますが、世界一女性の
        収入力のあるスウェーデン人で、それは軽蔑言葉になりません。スウェーデン版では、日本と
        同じ、動物でしたね。また、アメリカ版では、不良がプールの時間で水着の女の子にちょっかい
        出して体育の先生に叱られていましたが、もちろん、スウェーデン人の子どもはそんなバカは
        しません。

     ⑨家出の向き: アメリカ版は列車は左に走っていました。どこに行くのでしょう。スウェーデン版
        は右、上手(かみて)です。これは、明らかにノルウェー方面、つまり、より日照時間の少ない
        土地へと向かったことを示しています。私がいた中部スウェーデンで、冬の日照時間は午前9時
        くらいから午後3時くらい。北部はほとんどずっと暗いはずです。彼女は、そこで、のびのび
        昼間も外を歩けるはずです。
     

     ⑩番外編: 英語版では、いじめられる少年に少女が、いざとなったら自分が助けてあげる、と言う
        場面に続いて I am stronger than you think I am. 「私はあなたがおもっているより強いの」
        というセリフがあります。これはスウェーデン版にはありません。これは、明らかに、この少女
        が別の映画で演じた Hit girl という少女スパイ殺戮者を意識して観客受けを狙ったものでしょう。
        では、スウェーデン版のほうでドラキュラ以外の場面で少女がいつもか弱く見えているかという
        と……終盤で、少年がプールに入る場面があります。それを少女が外の窓から見ています。その
        少女の毛糸の帽子に注目してください。青と黄色の3クローノル模様は、スウェーデンのアイス
        ホッケーナショナルチームのユニフォーム模様です。いわば、スウェーデンのみならず、北欧最
        強の旗印をスウェーデン版の彼女も見せているのです。まあ、それは、スウェーデン人にしかわ
        からないのでしょうが……


でも、このスウェーデン版映画が好評だったのは、スウェーデンの美しさをわかる日本人も増えてきた、ということでうれしくおもいます。字幕が、もうすこし正確なら、言うことないんですけどね。   
映画評、以上.

(20120219記)
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