スウェーデン人の恋人
- 2017/08/25(Fri) -
彼女は、つきあいの当初、
「あなたには、もっとスウェーデン語ができるようになってほしい」
と言った.

スウェーデンに来てスウェーデン語を習い始めた私は、生活に支障はない程度には1か月後には話せたし、
私がいたノルド語学科とインド・ヨーロッパ語比較言語学科はともに授業はスウェーデン語だったが、
それでも彼女の要求は高かった.
それは、私がまだスウェーデンの大学に入る外国人学生のためのスウェーデン語の国家試験に受かる前のことだった.



私は、そう言われたときは、なんて厳しいことを、と感じたが、

後になって、たとえば、スウェーデン語がしゃべれなくてもあなたとなら、などと言われるよりはずっと心地よかった

そのときの彼女は私に何を求めたのか

ずっとスウェーデンにいる人間に私になってほしかったのか

自分の親族の年寄りや子どもともスウェーデン語で話せる人間になってほしかったのか

単に、英語だけで済ますお手軽な人間でいてほしくないとおもったのか

「大切で意義深いことを話すにはスウェーデン語でなければならない」
というのが彼女の弁だった.

彼女は、もちろん、マーケットのレジ打ちでもきちんとした英語を話すスウェーデンのウプサラ大学の学生である

英語などなんの問題もないはずだった.

彼女の母国を尊べ、ということか、それとも、・・・

やっぱり、スウェーデン語くらいスウェーデン人と同じくらいに使えるようになろうという気概をもて、

ということだったのだと、その後ずっと私はおもっていた.



彼女と出会ったのは、北欧神話である散文 『エッダ』 の授業だった.

それは私が日本で読みかじった古代アイスランド語の文献だ.


昔のアイスランド語が読めるのだから、現代のスウェーデン語はもっとできるようになるはずだ、
という彼女の言葉を、そういえばさっき思い出して、おもわず笑みがこぼれてしまった.

私は、スウェーデンでは、ほんとうに、たくさんたくさん励まされて勉強していたのだ.スウェーデンでは……



いまは、彼女が使ったその言語の私の辞書だけが書棚に残る.


ああ、それと、彼女がいつもしていた、スウェーデン流の、頸にバンダナを巻く習慣も.


b



(10.5.9.記)

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コメント
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とても素敵な文章です! はくしゅー。
2010/03/12 13:24  | URL | #-[ 編集] |  ▲ top


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