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あるスウェーデン人女性友達の記憶
- 2017/02/24(Fri) -
(本記事は、2007年1月26日、沖縄に来る以前、東京で最後に書かれた)


先々週末から今週初めまで入院していた。脳と右目の機能を失うところだったが、まだ頭痛と眼の傷があるだけで、一応は生活している。

右目が見えなくなります、と医師から言われたとき、学生時代に、最も信頼しあった、簡単に言うと、たぶん恋人だった彼女とした会話を思い出した。

-身体の機能を失わなければならないとしたら、どこなら許容できる?

目、かな…

-ぼくは、脚かな。目がなくなっちゃ、勉強できない。

愚かな会話だが、当時の、若さを謳歌していた私たちは、それを一部でも失うことがたまらなく恐ろしくもあった。

しかし、彼女なら、盲目でも美しいだろう、と当時の私はおもった。



それから、スウェーデンに行って、盲目の娘と出会った。長い金髪に端麗な物腰のKajsa(カイサ)は、私のかつての恋人と気性も外見もよく似ていた。ただ目が見えないということを除いては。

いつだったか、学生寮の建物全体のパーティで、私が親友の部屋でKajsaと話していたら、酔った男がその女友達をつれて入ってきて、私の親友のベッドでことを始めようとした。酔ってきゃぁきゃぁ笑う女の子をベッドに押し倒して、彼もその上にまたがったときに、部屋の持ち主の私の親友が入ってきた。

彼は、極めて気のいい奴なので、「いいよ、ベッドは好きに使いな」 と言ってすぐに出ていってしまった。

しかし、初めから部屋にいた私とKajsaは、ベッドから男が 「出て行け」 と言っても、出ていかなかった。Kajsa は無言で座っていたし、私は腕を組んでベッドの2人を凝視してやった。


私と男が、互いに腕ずくでも、という構えでやりとりしたのち、やっと男は諦めて、これもしらけてしまった女を連れて出ていった。



その翌日、みんなでお茶を飲んでいるときに、Kajsaが唐突に口を開いて、私とその男がいかに滑稽な理屈で言い合いをしたかを、声音も2人ぶんつくって再現してみせた。当の私さえ覚えていないセリフまで。私も含め、みんなが爆笑の連続だったことは言うまでもない。




とびぬけた記憶力の持ち主だった彼女は、ウプサラ大学でも優等生だった。生まれつき全盲の彼女は、人間の姿を 「見た」 ことはないのに、私たちが性行為の話題をすると、くすり、と笑ったりもした。彼女の頭脳世界は神秘だ。またいつか逢っても、だいじょうぶ、きっと彼女は何十年たっても私を覚えているだろう。

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