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三輪車と毛糸帽子
- 2006/06/02(Fri) -
【とき】 日曜午後4時過ぎ、太陽が夕日になる直前

【ところ】 東京・自宅そば地蔵さん小路

細い小路に、お母さんと、補助輪がとれたばかりのピンクの自転車のお姉さんと、三輪車の妹

お姉さんは、後ろの妹かお母さんに何か声をかけながら、彼女らに近づき歩む私のほうによろよろと自転車をこいできた

私が視界に入ると、お姉さんは、後方に叫ぶのをやめて私の手前まで黙ってこいできた

私は、それを、他者に対する配慮ととり、「お姉さん」らしい彼女にほんの一瞬目をとめ、微笑み、その脇を通り過ぎる

三輪車の妹のそばまで私が歩むと、彼女は、私のほうに向いて片手をハンドルから離して「ばいばい」と言った

私は、それが、彼女と私を結んだ線上、私の背後にいるはずのお母さんに言ったものと思い、彼女に視線を止めたまま脇を歩み過ぎる

三輪車の妹は、さらに身体をねじって私を見送りながら「ばいばい、ばいばい、ばいばい」と繰り返した

私は、自分に言われたのだと気づき、思いがけない気恥ずかしさを感じながら、にっこり微笑み返した

彼女はさらに手を振りながら、もう片手もハンドルから離して、目の上にずり落ちてきた毛糸の帽子を上げようとした

その瞬間、手を離したことで、地面についていた足も離れ、彼女は三輪車の上に腰掛けた状態になった

路側へと道が傾斜しており、彼女が座った三輪車は後方へと移動した

その動きに合わせて、彼女は、私に片手で手を振り、片手で毛糸帽子を押さえたまま、後ろに倒れそうになった

私が、一瞬で危険を感じて走り寄ったよりも早く、お母さんがハンドルをつかんだ

妹は、近寄った私に何事もなかったように手を振って「ばいばい」と言い続けた

沈みかけた太陽は私が来た方角にあり、その時のお母さんの顔は太陽を背にして暗くわからなかった

私は、ただ、その妹に合わせて、笑って「バイバイ」と言って手を振り、歩み去った

私が道を曲がるまで、背後で「ばいばい」という声が聞こえた

角で振り返ると、まだ、彼女は太陽を背にして私を向いて手を振っていた

私も、笑顔をつくって手を振り「バイバイ」と叫んだ

お母さんの顔は影になり、他人の子どもに笑って手を振る私をいぶかしんだかどうかはわからない

しかし、それは、もうどうでもよいと思えた

(この記事は、管理者の別ブログにおいて今年2月に書かれたものである。)
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